書籍「仏事・仏壇がよくわかる」を全編公開

第2章(2) 自分の宗派を調べてみましょう

【4】自分の宗派を調べてみましょう

はじめて仏壇を購入するとき、自分がどの宗派なのかを調べてからにしましょう。仏壇に安置する本尊や脇仏などが宗派によって違うからです。
宗派調べは自分のルーツを調べるようなものです。両親が亡くなった場合、まずは父方の実家、あるいは親戚に聞きましょう。父方の実家に誰も親戚がいない場合は、その土地まで出向いて、近所の人に聞くか、お寺に聞くことになるかもしれません。
実家の宗派にこだわらず、自分が信じる宗派に決めることもできます。また、法事やお墓参りなどに便利に、と自分の家の近くの寺を菩提寺と決める人もいます。菩提寺とは、一家が代々信仰し、葬式や法事などを営むお寺のことです。菩提寺を選ぶときは、宗派が納得できるお寺であることが大切です。菩提寺の宗派が自分の宗派となるのですから。

「檀家(だんか)」

檀家とは、特定のお寺の信徒となり、お布施などでお寺に経済的援助を持続して行い、葬式や法事を行ってもらう家のことをいいます。特定のお寺のことを菩提寺(ぼだいじ)、あるいは檀那寺(だんなじ)といいます。
菩提寺と檀家という檀家制度が生まれたのは、江戸時代のはじめです。キリシタン禁制によって異教徒を監視する目的で、すべての人はどこかの寺の檀家となる寺請制度が生まれたのです。人々の所属寺院を明記したのが『宗門人別帳(しゅうもんにんべつちょう)』で、これが戸籍のような役目を果たすようになりました。お寺は檀家にとって生活全体にかかわる大きな存在となり、その関係がいまも続いているのです。
浄土真宗では、門徒といいます。

【5】仏壇の種類

仏壇は「家の中のお寺」と言われるように、仏壇の内部のつくりは寺院の内陣を模しています。飛鳥時代につくられた法隆寺の玉虫厨子が、現存するもっとも古い仏壇といわれています。仏壇のなかで、本尊を安置する一段高くなった須弥壇(しゅみだん)は、仏様が住むという須弥山(しゅみせん)をあらわしています。
寺院を模してつくられた仏壇には、金仏壇と唐木仏壇があります。最近では家具調仏壇、永久仏壇といった新しい仏壇もできています。

1.金仏壇

金仏壇は、全体に黒の漆塗りが施され、内部に金箔が張ってある仏壇で、塗り仏壇とも呼ばれています。
浄土真宗の家に金仏壇が置いてあることが多いため、金仏壇は浄土真宗用だと思われていますが、金仏壇は他の宗派でも使います。
江戸時代からの歴史を持つ金仏壇の産地は全国各地にあります。山形仏壇、新潟・白根仏壇、三条仏壇、長岡仏壇、飯山仏壇、名古屋仏壇、三河仏壇、金沢仏壇、七尾仏壇、彦根仏壇、京仏壇、大阪仏壇、広島仏壇、八女福島仏壇、川辺仏壇の15の産地が経済産業大臣から伝統的工芸品の指定を受けています。
各産地では古くから伝えられた独特な形式の金仏壇が作られています。
昔は仏壇も地域性が強く、地域で決まった形式の仏壇を購入していましたが、現在は地域にこだわらず、好みの仏壇を求めるお客様が増えています。
伝統的な金仏壇の製造には、木地師(きじし)・宮殿師(くうでんし)(屋根師(やねし))・彫刻師(ちょうこくし)・塗り師(ぬりし)・呂色師(ろいろし)・金箔押師(きんぱくおしし)・蒔絵師(まきえし)・彩色師(さいしきし)・錺金具師(かざりかなぐし)・仕立師(したてし)(組立師(くみたてし))など、多くの職人の手を必要とします。
産地の職人がすべて伝統的材料と技法で作る伝統的工芸品の金仏壇は高級仏壇です。

2.唐木仏壇

唐木仏壇は、黒檀や紫檀など銘木と呼ばれている木材の美しい木目を生かした仏壇です。明治時代になってから、つくられるようになりました。木材の色や木目を生かして作られているので、木材の種類や材質によって仏壇の値段が全然違います。
代表的な木材を紹介しましょう。

(1)黒檀
インドネシアが主な原産地のカキノキ科で、材質は堅く、水に沈むほど緻密で、耐久性に優れ、虫や菌に侵されにくいうえ、乾燥性がよいという特徴があります。黒地に美しい木目が浮き出た高級な木材で、「木のダイヤモンド」といわれるほど高価です。

(2)紫檀
ラオス、タイ、ベトナムなどが主な原産地のマメ科で、周辺部分は白色ですが、心材は暗紫紅色で、材質は堅くて緻密なところは黒檀と同じです。黒檀と紫檀が昔から唐木と呼ばれていたことから、唐木仏壇と名づけられたようです。正倉院御物の唐木細工のなかではもっとも多く見られ、古くから珍重された木材です。

(3)桑
桑は全国各地で産出される木材ですが、銘木として使える木は、伊豆諸島で産出される「島桑」です。年輪が緻密で、美しい木目と粘りのある木材として知られています。江戸時代から江戸指物などに用いられていました。国内の銘木のなかでは、最高級の木材です。

(4)欅(けやき)
ニレ科で、広葉樹のなかでは極めて整った樹形をしており、北海道を除く全国が産地です。古くから神社や寺院建築に使われた木目の美しい木材です。材質も堅く、仏壇に向いています。

3.家具調仏壇

家具調仏壇は、新型仏壇とか都市型仏壇とも呼ばれ、洋間に合わせた新しいデザインの仏壇です。これまでの伝統的様式から彫刻や宮殿を排除し、インテリア性を重視したすっきりしたデザインで、小型のタイプが主流です。マンションやフローリングの部屋に違和感なく安置できます。材質はナラやウォールナットなどの洋家具材を使用した、明るい自然感のある色調のものが多いのも特徴です。

4.永久仏壇

永久仏壇は、天然素材 100%のリビングにも合う仏壇です。すべてウォールナットの無垢材を使用し、分解組立が容易に出来る構造をスリ漆塗りで仕上げています。再生修理が簡単にでき100年以上使う事も可能な仏壇です。

「家紋入り仏壇」

「この紋所が目に入らぬか」
この文句は、おなじみ『水戸黄門』のお決まりのシーンです。水戸黄門の最後のシーンで示される紋所が、徳川家の「葵」のご紋です。おそらく日本で一番有名な家紋でしょう。
家紋とは徳川家の葵、前田家の梅鉢など家々で定まっている紋所(もんどころ)のことです。紋章(もんしょう)とも定紋(じょうもん)とも呼ばれ、平安初期に公家が牛車に紋を飾ったのが始まりといわれています。戦国時代になると武士が旗や兜(かぶと)に入れて目印としました。
江戸時代には礼装用の着物や、嫁入り道具、墓石などに入れ、冠婚葬祭に欠かせないものとなったのです。
家の歴史を伝え、シンボルとされてきた家紋は、仏壇にも入れるようになり、いまでも家紋入りの仏壇を希望する人は多くいます。
お客様に「家紋はなんですか」とお聞きすると、知らない方が多くいらっしゃいます。自分の家の家紋を知らない人が増えています。
日本の家紋には洗練された美しさがあリます。先祖から脈々と伝えられてきた家紋を見直してみたらいかがでしょうか。

【6】仏壇の形式

仏壇の形式には3種類あります。仏壇を安置する場所によって大きさ、形式を決めます。

(1)上置型仏壇
高さが36センチ~88センチくらいのもので、整理タンスやサイドボードの上、押入れの上半分のスペースに置くタイプの仏壇です。

(2)地袋付仏間用仏壇
高さが98センチ~131センチくらいのもので、地袋が付いている仏間に置くタイプの仏壇です。

(3)台付型仏壇
高さが106センチ~173センチくらいのもので、仏間や床の間に直に置くタイプの仏壇です。壁を背にして畳の上に置くこともできます。

「最初の仏壇」

日本最初の仏壇は法隆寺に所蔵されている「玉虫厨子(たまむしのずし)」ですが、現在の仏壇の原型は、禅宗の寺院が位牌を祀るためにつくった位牌棚といわれています。有名な位牌棚は銀閣寺東求堂にあるもので、本尊を安置するための須弥壇と位牌を祀る位牌棚があります。これが現在の仏壇の形になったといわれています。
江戸時代に位牌を祀るための仏壇がひろまり、それがどの家にも仏壇があるまでにしたのは、江戸時代の檀家制度でした。

【7】宗派で本尊が違います

お客様に「本尊は宗派によって違いますよ」とお伝えすると、みなさん、驚かれます。仏壇のなかには仏像が安置されていることは知っていても、宗派で違っていることまでは知らない方が多いです。
「本尊」とは信仰の中心として祀られている仏像や曼荼羅(まんだら)のことで、仏壇の中心である須弥壇には本尊を安置します。その両脇に脇仏(脇侍(わきじ)ともいいます)を安置します。
本尊は菩提寺を通して本山からいただく場合もありますが、一般には仏壇店から購入します。自分がどの宗派なのかを知っていないと、本尊を決めることもできません。仏壇を購入することを決めたら、宗派を知ることがとても重要だということがおわかりいただけたと思います。
仏像には釈迦如来座像、阿弥陀如来座像、阿弥陀如来立像、大日如来像があります。脇仏にも菩薩像や不動明王などがあります。最初はどの仏像をみても同じように見えるのではないでしょうか。仏壇店の店員は最初に仏像の手の組み方を教えられて見分け方を学びます。その手の形を印相といいます。
手の組み方も含めて、それぞれの本尊と脇仏について簡単に説明しましょう。

1.本尊

本尊は仏壇の中心に安置される仏像(仏像だけではなく、掛け軸をかける場合もあります)、あるいは曼荼羅です。安置する仏像は宗派によって異なります。

(1)釈迦如来座像
釈迦はシャーキャ(釈迦)国の王子として出家修行し如来となった、歴史上に実在した唯一の仏です。菩提樹の下で悟りを開いたときの座った姿をしています。そのとき、釈迦が組んでいた手が禅定印(ぜんじょういん)といって、両手を上に向けへその前で重ね、両方の親指先を接する印相です。
臨済宗、曹洞宗の本尊です。
如来とは、悟りを開いた人をいいます。如とは真理のことで、その真理の世界からこの世に来た人という意味です。

(2)阿弥陀如来座像
梵語のアミターバ(無量光如来)、またはアミタユース(無量寿如来)の音を写したもので、量りきれないほどにたくさんある光、また量り知れないほどの寿命を意味します。この苦悩の世にいる人々を、西方の極楽浄土へ救い続けてくれる仏です。
手の組み方は、両手を上に向けへその前で重ね、両人差し指を合わせて立て、その指先に親指をのせる阿弥陀定印(あみだじょういん)という印相です。
この手の組み方が釈迦との見分け方でもあります。
天台宗の本尊です。

(3)阿弥陀如来立像
右手は外に向けて胸前に上げ、左手は外に向け下ろし、両手とも親指と人差し指をつける来迎印(らいごういん)という印相です。
宗派によって本尊の光背(こうはい)の形が異なり、浄土宗は舟形の光背、真宗大谷派は放射状の光を表現した櫛形の光背、浄土真宗本願寺派は身光と櫛形の光背がついたものです。

(4)大日如来像
密教において最高位の仏で、宇宙の根本仏とされています。釈迦や阿弥陀と違い、大日如来は頭に宝冠をかぶり、首に瓔珞(ようらく)で飾るなど装飾しています。手の組み方は智拳印(ちけんいん)といって、胸前で左の人差し指を立て、その指を右手で握る印相です。
真言宗の本尊です。

2.脇仏

本尊の脇で、教化を助けるのが脇仏です。脇侍(わきじ)ともいいます。

(1)不動明王
不動明王は他の仏像と違って、怒りの表情をしています。そして火焔(かえん)を背負い、右手に剣を、左手に羂索(けんさく)といって、青、黄、赤、白、黒の5色の糸をなった縄を持っています。見るからに恐ろしい姿ですが、怒りをもって慈悲を庶民に伝えているそうです。不動明王は大日如来の使者として災害悪毒を除き、煩悩(ぼんのう)を断ち切り、所願を成就させるとして、広く信仰を集めています。

(2)九字(くじ)・十字(じゅうじ)の名号(みょうごう)
浄土真宗で使われる名号のことで、九字名号には「南無不可思議光如来」と書かれ、十字名号には「帰命盡蓋十方旡碍光如来」と書かれています。

(3)菩薩
菩薩とは悟りを求めて修行を行う人のことであり、脇仏として安置される仏像です。種類が多く、観音菩薩、地蔵菩薩、文殊菩薩、普賢菩薩などがあります。観音菩薩の正式名は観世音菩薩といって、すべての音(庶民の救いを求める声)を聞き、すぐに救済する菩薩のことです。
地蔵菩薩は、56億7000万年後に弥勒菩薩があらわれて、すべての人を救うまで、地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間、天上の六道の生きているものすべてを救済しつづける菩薩です。
文殊菩薩は、智慧をつかさどる菩薩、普賢菩薩は、仏の真理や修行の徳をつかさどる菩薩です。文殊菩薩と普賢菩薩は一対をなす釈迦の脇仏です。文殊菩薩は智慧の威徳を示す獅子に乗り、普賢菩薩は白象に乗っています。

(4)大黒天
日本では大黒様として親しまれ、食物の神として台所に祀られています。大黒天は、もともとはインドの戦闘、財宝の神でしたが、室町時代に日本に入ってきたとき、もともと日本の神だった大国主命(おおくにぬしのみこと)と結びついたのです。江戸時代には米俵に乗る福の神となって、七福神のひとりとなり、現在にいたっています。

(5)鬼子母神
安産や育児の守護神とされています。もともとは幼児を食べる悪女でしたが、仏に自分の末子を隠されて、親の心を知り、仏教を信じるようになったといわれています。

各宗派の本尊と脇仏
宗派 本尊 右の脇仏 左の脇仏
天台宗 阿弥陀如来座像 天台大師 伝教大師
真言宗 大日如来像 弘法大師 不動明王
浄土宗 舟阿弥陀如来立像 善導大師 法然上人
浄土真宗本願寺派 西阿弥陀如来立像 親鸞聖人 蓮如上人
真宗大谷派 東阿弥陀如来立像 十字名号 九字名号
臨済宗 釈迦如来座像 各派により異なりますが、文殊菩薩とするところもあります。 各派により異なりますが、普賢菩薩とするところもあります。
曹洞宗 釈迦如来座像 承陽大師(道元禅師) 常済大師(瑩山禅師)
日蓮宗 曼荼羅 鬼子母神 大黒天

書籍「仏事・仏壇がよくわかる」

本記事は書籍「仏事・仏壇がよくわかる」からの転載です。

著:滝田 雅敏